【todoro】ニュースレター No.14 工業と芸術

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配信日:2025年6月3日

こんにちは('-')/
todoroの平岡です。

尼崎市では強めの雨が降っています。雨さえ降らなければ風薫る良い季節ですが、今日は梅雨を思わせる長雨になりそうです。

さて、今回は工業と芸術という観点で、実際に工場の中で働く人の視点から少し扉を開いてみようと思います。

工業というのは本来「同じものを同じ品質でたくさん作る」世界です。そして芸術というのは本来「ひとつでいいので自分が最高だと思えるものを作る」世界です。

元々起源となる意義は異なっていたはずなのですが、現代においてはかなり近い関係にあります。工芸という言葉もありますね。辞書を繙くと、芸術のページには「特殊な素材・手段・形式により、技巧を駆使して美を想像・表現しようとする人間活動、およびその作品」とあります。(出展:スーパー大辞林 三省堂)

この「技巧を駆使」という部分に工業の技術や技能と非常に高い親和性があります。絵画にしろ彫刻にしろ歌唱にしろ演奏にしろ、修練を伴わないと高みにはたどり着けないということを定義が示しています。これは工業と全く同じです。そして工業と芸術の境目は、時代の流れとともに曖昧になり、どんどん混ざっているように感じます。

たとえば版画。江戸時代に大変な人気を誇った歌川国芳という画家がいます。今年の2月に大阪中之島美術館で歌川国芳展を見てきたのですが、絵師としての国芳の素晴らしい絵の裏には、彫師の超絶的な技巧も見て取ることができました。

日本画には落款(らっかん)といって作者の署名や印章などが記されますが、国芳の画には彫師の落款もたくさん押されていました。しかも同じ彫師の名前がたくさん見受けられました。ということは、ここから推測になりますが、国芳は彫師にも落款を押させることで共に栄えていく未来を見据えたり、信頼できる彫師にのみ仕事を依頼したいと普段から考えていたのではないかと思います。

そして版画という工業的な量産のシステムが取り入れられたことで、それまで1枚きりしかなかった絵画に対して、極めて近いものが、安く、多く手に入るようになり、絵画という芸術は富豪の特権から市民の娯楽となりました。

実際に手や足を動かすことで生産物や価値を生みだす人たちのことを職人と呼びますが、工場で働く人だけでなく、土木、調理、製菓、ヘアカットやネイルアートの美容など、ありとあらゆる「現場」で職人はしのぎを削ります。

現代では、質量のないもの、つまりイラストやウェブサイトや動画データなどの作成でも職人と呼べるのではないでしょうか。

設計者や製作者が「手間はかかるが、ここは譲れない」という「自分との戦い」のようなものとの対峙が、完成品を見る人や使う人にとっての価値になります。

たとえば「面取り(めんとり)」というものがあります。これは木や金属などを切断した時に、角が尖ったままだと危ないので少し削っておくことです。この面取りひとつとっても、丸まらせるか、角張ったデザインにするか、どれくらい削るのか、その判断には実用性や美学が潜んでいます。コストとの天秤に腐心することも多々あります。

以前、アメリカから日本に来られて数年という方と話をした際に、「こだわり」をなんと訳しますかと聞いたところ「rejection」と返答がありました。直訳は「拒絶」となりますが、なるほどと思う反面、シンプル過ぎる考え方では、細かい機微の部分を汲み取るのはなかなか難しいなと実感しました。

todoroでも、工業的な側面から、芸術的な側面から、目指す姿にそれぞれの製品が沿っているか、よくよく考えて生産活動を行っています。

さて、4月15日に発売した小さくてシンプルなしおり「issun」ですが、ご購入予定の方は是非4月1日のメールの最下部のリンクからアクセスしてください。クーポンが有効になります。(※4月1日のニュースレターからでないと割引クーポンは有効になりません!クーポンの有効期限は2025年6月30日です。)

届いてないよ、という方はメールにてご連絡ください。

またニュースレターでお会いしましょう('-' )\m/

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